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「引き算」が店を育てる─メニューを絞って見えてきたもの

8月に麹町本店を『そらのいろ麹町本舗』としてリニューアルオープン。そして9月6日には、新店舗『そらのいろ西葛西店』を開店しました。グループとして、東京東部では初めての出店となります。少し緊張しながらも、スタッフと共に新しい土地での挑戦を楽しんでいます。


今回の本舗立ち上げにあたって、「メニュー構成」についてあらためて深く考える時間がありました。そのなかで感じたことを、今回は書いてみたいと思います。


「何の店か」を明確にするということ


まず、『そらのいろ麹町本舗』では、思い切ってメニューを絞りこみました。スープもタレも油も基本は一種類、麺も辛いラーメン用の平打ち麺を含めて二種類。全体として非常にシンプルな構成です。


何を出す店なのかが一目で伝わる、というのは実は大きなことです。「豚骨拉麺」と暖簾に掲げれば、それだけでお客さまに伝わるものがある。これはラーメン業界においても同じで、『ラーメン二郎』や『家系』のように、潔くジャンルを提示する強さがある。その価値を、今あらためて見直しています。


というのも、ソラノイロはこれまで「選べるラーメン屋」であることに価値を置いてきたからです。中華ソバ、ベジソバ、限定ラーメン、そして季節のフルーツを使った創作メニュー……。選択肢の多さは、僕たちらしさの一つでもありました。


ヴィーガンやグルテンフリーといった食事制限のある方にも、ラーメンの魅力を届けたいという想いから、対応メニューも継続してきました。来店のたびに異なる一杯と出会えるという体験は、確かにソラノイロらしい楽しさだったと思っています。


けれども、その自由さがゆえに、「この店は一体何の店なのか?」と戸惑わせてしまうことがあったのも事実です。メニューの幅が広がれば、それに応じて仕込みやオペレーションも複雑になり、スタッフの負荷も大きくなっていました。


今、麹町本舗での営業を経て感じるのは、選択肢の少なさがもたらす「強さ」です。シンプルな構成の豚骨ラーメンに集中することで、より丁寧に、迷いなく一杯を作れる。そんな環境が整っています。



変えることと、変えないことを考えていく


創業以来、ソラノイロでは数百種類に及ぶ「限定ラーメン」を考案してきました。毎回レシピを刷新し、新しい表現を追いかけてきた日々。特に冷やし麺は、毎年バージョンを変え、趣向を凝らしてきた、という自負があります。


ただ、あるときお客さまから「去年のあの味、また食べたいな」と声をかけていただいたことがあり、その一言に、思わず立ち止まりました。


池尻大橋の夏の風物詩『鶏舎』の「冷やし葱そば」。そして、ガッツリ系の名店『千里眼』の冷やし中華。どちらも、毎年「あの味」を求めてお客さまが列をなす。季節限定であっても、変わらない一杯が持つ“定番”としての強さと安心感に、ハッとさせられました。


限定ラーメンのあり方も、少しずつ変えていってもいいのではないか。変わり続けることも大切ですが、変えずに続けることにも価値がある。そう思うようになっています。


現在、東銀座に新たな『そらのいろ本店』の開業準備を進めています。そのなかで見えてきたのは、メニューに「出す意味」を持たせるという方針です。たとえば、つけ麺は夏限定の定番として。フルーツラーメンは、麹町本舗で継続して展開していく。創作をやめるわけではありません。それぞれの限定メニューが、場所や季節に根ざしていること。その必然性が、今の僕には大切に思えるのです。


現場の負担は抑えながらも、ソラノイロらしさはしっかりと残す。そのバランスを整えたうえで、継続可能なメニュー構成をつくっていきたいと考えています。


2026年、ソラノイロは15周年を迎えます。今回の移転や出店を通じて、「何のためにラーメンを作っているのか」という問いに、もう一度静かに向き合うことができました。変えることと、変えないこと。そのどちらにも理由があり、どちらにも覚悟がある。そのうえで、また新たな一歩を踏み出していけたらと思います。


ラーメン店『ソラノイロ』創業者

飲食店コンサルタント

宮崎千尋

 
 
 

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