「人が集まらない」と嘆く前に、立ち止まって考える
6年前に、僕はこんな発信をしました。
「人が足りない」と嘆くラーメン店は多い。でも、働く人たちの価値観が大きく変化しているのに、店側の環境整備が追いついていないのではないか? という問いを投げかけた内容でした。店を良くしたいなら、まずは従業員の環境を整えること。教育に投資し、成長の機会を与え、将来の道筋を示すことが、結果として店の発展につながる――そう考え、当時の僕は発信しました。
あれから6年、僕たちはどれだけ変われただろうか。
ソラノイロはロピアにグループインし、給与体系を見直し、ベースアップを実現しました。業績連動だった賞与もレギュラー化し、退職金制度も導入予定。年収ベースで条件を提示できるようになり、「給与面で魅力のある職場」をつくることができています。
でも、僕はその先を考えたい。
安心感があるから、人は続けられる
今の時代、多くの人が「不安を抱えながら生きている」と感じます。社会保険の負担増、物価高騰、将来の見えない時代――。若い人たちと話していても、「将来が不安だから、お金を貯めている」という声をよく聞きます。でも、「何かを実現するため」ではなく、「漠然とした不安を解消するため」に備えているという感覚が強いんです。
僕自身は、「お店を持ちたい」という明確な目標があったからこそ、創業前の5年間で500万円を貯めました。それが独立開業の基盤となり、今の自分につながっています。でも、今の若い世代は、将来の夢よりも「安心できる環境があるか?」を重視していると感じます。だからこそ、ラーメン屋も「安定したキャリア」を提示できる場所であるべきなんです。
ラーメン屋は「キャリア」を提案できているか
今、ラーメン業界で働く多くの人が、将来の不安を抱えたまま仕事を続けています。
このまま働き続けても、どんな未来が待っているのか? 年齢を重ねても現場でやっていけるのか? 長く働けるだけの待遇やキャリアパスがあるのか? こうした不安がある限り、「ラーメン業界で働こう」と思う若者はなかなか増えづらいでしょう。実際、ラーメン店では、キャリアの道筋を明確に示せている店はまだ少ないのが現実です。
だからこそ、ラーメン屋として「キャリアの提案」ができる業界にしなければならないと僕は考えています。
安心感とキャリアパスをどうつくるか
ソラノイロでは、キャリアを重ねてきた従業員を取締役につけ、役職を設け、思う存分マネジメントや店舗運営、メニュー開発に腕をふるってもらえる環境を整えました。長く働いて結果を出し、活躍することで、単なる「店員」から「経営を担う存在」も視野に入ってくる。その道筋を明確にすることで、「ここで働き続ければ未来がある」と実感できる職場を目指しています。さらに、給与のステップを明確にし、役職やスキルに応じて年収が上がる仕組みも導入しました。
「この会社で働き続けたら、将来どうなるのか?」が見えることが、今の時代に求められる安心感につながるはずです。
ラーメン業界の未来は「ただ美味しい」だけではいけない
美味しいラーメンを作ることは大前提。でも、それだけでは店も業界も続いていきません。安心して働ける環境があってこそ、挑戦もできるはずです。
今、ラーメン業界は「挑戦する業界」から「安心して働ける業界」へとシフトしています。もちろん、挑戦する人がいなくなったわけではありません。でも、昔のように、「ラーメン職人になって独自の道を極め、海外に雄飛しよう」「名門の味を学んで腕を磨き、自分の暖簾を掲げよう」という考え方の人は減ってきている。むしろ、「ここで働くことで、安心して暮らせる未来があるか」を重視する人が増えていると感じます。
「夢」だけでなく「安定」も提示できる業界へ
「ラーメン屋で働く=過酷」「安定しない」「将来が不安」というイメージを変えたい。
そう思って、ソラノイロではキャリアパスを明確にし、働く人が将来を描ける環境づくりを進めています。
これからのラーメン業界は、「ただ美味しいだけ」では続かない。キャリアが描けること、安定して働き続けられること、人が「ここで働いてよかった」と思えること。ラーメン業界に、未来を描ける仕事をつくる。そうすれば、もっと多くの人が「ラーメン屋になりたい」と思える業界になるはずです。
これが、僕が目指していることです。
次回:「ラーメン1杯1000円時代」に、どう向き合う?
ソラノイロ本店では、3月7日からメニューの一部をリニューアルしました。スーパーロピアのグループインにより、仕入れ先などの変更もあり、お客様に少しでも還元できたらと思い、メニューを見直しました。特に、中華そばはシンプルな盛り付けにし、価格を1,000円に設定。これからの時代、ラーメン1杯1,000円という価格が当たり前になっていくのか? そして、僕たちラーメン店はどう向き合うべきなのか。
次回は、「ラーメン1杯1000円時代に、どう向き合うか」を考えていきたいと思います。ぜひ、ご期待ください!
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