現代ラーメンの源流を、いまもう一度考える──春木屋というブランドをめぐって
- 宮崎千尋

- 3月16日
- 読了時間: 3分
最近、春木屋の恵比寿店を訪れました。そのとき、自分が以前に書いたnoteのことを思い返したんです。
「春木屋は、僕のラーメン人生の原点とも言える店なのです」
僕は、そう書いています。
あれから7年が経ちましたが、その思いは今も変わっていません。
春木屋の本質はどこにあったのか?
でも、恵比寿では、正直言って愕然としました。そのラーメンは、荻窪や吉祥寺の春木屋とは別物だった。東京駅にできたという店舗もまだ行けていませんが……足が向かないというのが正直なところです。
春木屋は、決して「昔の味を守り続ける店」ではありませんでした。昭和24年の創業以来、舌が肥えていくお客様に対して「味が落ちた」と思われないために、常に改良を重ねてきた。いわゆる「春木屋理論」です。
変わらない旨さのために、変わり続ける。それが、春木屋というブランドの核だったはずです。
では、今回の変化は何なのか?僕のように、長年食べてきたファンはこう感じるでしょう。「これは、あの春木屋じゃない」と。食べ手は、驚くほど敏感です。
ブランドを引き継ぐということ
春木屋は、経営権が創業家からダイタンフード株式会社へ移っています。ご存じ、チェーン『名代富士そば』を展開する企業です。
資本が入ること自体は、珍しいことではありません。老舗が次の時代へ進むための選択として、理解できる部分もあります。でも、そこにある“魂”まで薄まってしまったら、それはさすがにしんどい。
ブランドとは、名前や看板のことではないし、味そのものだけでもない。そこに流れている思想や、向上し続けようとする姿勢まで含めて、ブランドなのだと思います。店舗数を増やすことが目的で、核となる味や思想が崩れてしまうなら、それは本末転倒だと僕は思います。だからこそ、自分たちがグループインしたときにも、強く意識しました。
M&Aをしたから味が落ちた。グループに入ったら別物になった。
そう言われることだけは、絶対に避けなければ。これは社員たちとも話し合ってきたことです。
拡大が目的化し、核となる思想が薄まってしまうのであれば、それは春木屋理論の否定になってしまうのではないでしょうか。これは批判ではありません。春木屋が好きだからこそ、あの変化が悲しかった。荻窪で完成された味に期待している人がどれだけいるでしょうか。
ブランドを継ぐということは、歴史をそのまま引き継ぐ、ということです。それができないなら、ただの看板の流用になってしまう。
資本の論理と、老舗の思想は両立できるのか。答えが出ない問いだと思いますが、これからも考えていきたいと思っています。
ラーメン店『ソラノイロ』創業者
飲食店コンサルタント 宮崎千尋

コメント