「日々おいしくする」ということの大切さ
- 宮崎千尋

- 2025年12月13日
- 読了時間: 3分
『そらのいろ銀座本店』をオープンしてから、日々のオペレーションの中で強く感じることがあります。
ラーメンという料理は、どれだけメニューを手がけてきても、どれだけ試作を重ねても、「実際の店で提供してみて初めて見えるものが必ずある」という事実です。
場所が変わればお客様も変わる。器が変われば味の印象も変わる。麺が変われば、一杯の佇まいさえ変わる。つくづく、ラーメンは繊細で、奥深い。
今日はそんな「日々おいしくする」というテーマについて、銀座本店で改めて気づいたことを書いてみたいと思います。
器ひとつで、ラーメンはまったく“別物”になる
銀座本店では、新たなラーメンを提供しています。麺をもち小麦の手揉み麺に、器もシャープなモダンデザインのものに変更しました。お客様から好評の声もいただいていますが、正直に言うと、まだ完全には落ち着いていません。これはスープや麺そのものの出来というより、「全体としてどう見えるか」という印象の話です。
モダンな器にクラシックな味わいの中華ソバを合わせると、どこかまだ「落ち着きどころが定まっていない」ような感覚がある。
こうした違和感は、試作段階では見えません。店の光、湯気、レンゲを置いた瞬間のたたずまい──すべては現場でしかつかめません。だからこそ、提供しながら微調整を重ねていくしかないのです。
一方で、「これだ」と気持ちよくハマったものもあります。
キノコベジソバは、土のような質感を持つ、ボウルのような丼が驚くほど馴染みました。ヴィーガンラーメンも、コバルトブルーの器に澄んだスープが映えて、まるで海のような広がりを見せてくれる。
こうした「合う/合わない」は、いくら試作をしても机上では判断できません。実際に店で出して、初めて、
「これだ」「この方向は違いそうだ」
という確かな感覚が立ち上がります。
ここに、料理の商売としての面白さと難しさがあるのだと思います。
変わらないために、変わり続ける
麺も、スープも、器も、まだまだ変えていく余地があります。お客様にとってよりおいしく、より心地良く届くかたちを、日々少しずつ探り続けていく。
たとえば、先日『トイボックス』さんを訪れたとき、仕上げの工程が以前と変わっていました。名店であっても、小さな改善を積み重ねている。それが「日々おいしくする」という姿勢なのだと感じます。
僕自身もこの姿勢を大切にしてきましたが、同時に思うのは、僕だけが気づいて変えるのでは意味がないということです。
スタッフが自ら気づき、考え、手を加えられるようになること。そのための仕組みや文化を組織に根づかせていくこと。
僕の師匠・河原成美氏の言葉に、「変わらないために変わり続ける」というものがあります。
言葉にするのは簡単だけれど、日々の営業の中で実践し続けることは本当に難しい。だからこそ、この思想を「チームで共有する価値観」として根づかせたいと思っています。
ラーメンは、完成しない料理だ
銀座に移転して、改めて感じていることがあります。
それは、ラーメンには「完成」という言葉はない、ということ。味やビジュアル、スタッフのオペレーション、店作りなどなど、突き詰めていく項目は多岐にわたります。
「この街に何が合うか」「いつ来てもおいしいと思っていただけるか」
という視点まで含めて、日々更新していかなければならない。
そして、だからこそラーメンは面白い。
今日より明日、明日より明後日へ。少しずつでもおいしくしていく。その積み重ねこそが、ソラノイロらしさだと思っています。
銀座本店はまだ走り出したばかりですが、ここでまた理想の一杯に近づけるよう、これからも日々アップデートを続けていきます。
ラーメン店『ソラノイロ』創業者
飲食店コンサルタント
宮崎千尋



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