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1号店からの成功が連続するはずが…2号店で学んだ「経営の現実」

更新日:7月22日

さる6月14日、ソラノイロはおかげさまで14周年を迎えることができました。周年イベントでは、栃木・佐野の『麺屋ようすけ』田邊店主や、スタッフの「麺皇」とのコラボレーションで、たくさんのお客様をお迎えすることができました。


日々応援してくださる皆さま、そして支えてくださるすべての関係者の方々に、あらためて心からの感謝を込めて──本当にありがとうございます。


今回は、そんな節目にあたって、本店オープンの2年後、2013年の「2号店」のチャレンジを振り返ってみたいと思います。


でも、そこで得たのは、またしても痛烈な学び。それは、1号店の成功体験は、2号店の成功を約束してくれるわけではないということでした。


2号店『salt & mushroom』で描いた、ラーメンの新しいかたち


創業から3年目、店舗運営のリズムも少しずつつかめ、最初の店で作った借り入れも半分以上が返済できてきた頃。僕は次のステップとして、2号店を出すことを決断しました。

2号店『ソラノイロ salt & mushroom』(2013~2016年)は、今でも思い入れのある店舗です。


「塩煮干しソバ」「ソラの肉ソバ」「キノコベジソバ」という、まったく異なる3種のラーメンを展開。メニュー構成は、1号店に続いて「ラーメン=男性の食べ物」というイメージを覆す挑戦でした。


ベシソバの次のチャレンジで、人参のベジソバではなく、マッシュルームと生クリームを豚骨ベースに合わせ、ポルチーニパウダーやトリュフを具材に使った「キノコベジソバ」

「塩煮干しソバ」は、伊吹島の煮干しと真昆布を低温で抽出した出汁、アサリの塩だれに沖縄のソーキなどの具材を合わせた“アニマルオフ”に近い一杯

「肉ソバ」は、僕が京都五行時代に週に3回食べていた、京都『新福菜館』にインスパイアされた濃厚醤油ラーメン


味へのこだわりはもちろん、新たなソラノイロとしての世界観の表現にも全力で取り組んだ店だったと思います。でも、経営面で成功したかといえば、それは微妙です。むしろ失敗だったかもしれません。今にして思えば、創業のときの熱量は、この2号店では同じレベルで持てず、あくまで創業だけのその一度きりのものだったかもしれません。


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家賃が重かった──再びの借り入れと出店の判断


前回のnoteで書いたように、創業時に借りた銀行借り入れ資金は一度完済しました。そして、返済を終えたタイミングで、僕は再び銀行借り入れを行い、2号店を立ち上げたのです。


売上がゼロだったわけではありません。日々の営業はある程度動いていたし、常連のお客さんもいました。でも、家賃が本店のほぼ倍だったことが、ボディブローのようにじわじわ効いてきたんです。しかも、店舗の広さは本店とほぼ同じ。同じ駅でのドミナント出店にもかかわらず、ここまで条件に差が出るとは思っていませんでした。


「なぜこの物件でゴーサインを出してしまったのか」今振り返ると、この店に対しての、冷静な収支シミュレーションを進める前に、1号店の成功体験に影響されてしまったように感じます。


さらに、コバエの発生によって1週間営業を止めざるを得なかったり、衛生環境への対応コストも想定以上にかかりました。そうした積み重ねが、じわじわと経営を圧迫していきました。


成功体験をそのまま持ち込まないという学び


成功は「場所・タイミング・条件」が揃ってこそ生まれるものかもしれません。外食業界では、大手による業態模倣、顧客の成熟化、ラーメン業界特有のトレンドの移り変わりと、変化のスピードは想像以上です。


そんな中で、過去の成功体験を疑い、数字と向き合う視点を持つことは、経営者にとって不可欠です。


しかし、1号店の成功をそのまま2号店に持ち込める──当時の僕は、どこかでそんなふうに考えていました。


しかし、2号店は本店運営と並行しての展開だったこともあり、僕自身の時間もエネルギーも分散しがち。その影響で、スタッフ育成やオペレーションの構築にも十分なリソースが割けず、現場全体の完成度にムラが出てしまったのは否めません。


直感的な手応えや、現場で培ってきた肌感覚は、確かに起業初期の原動力になります。でも、経営を重ねてきた今だからこそ思うのは、その感覚こそ、数字で裏打ちしなければいけないということ。


●売上が伸び悩んだ場合でも損益分岐点を超えられるか

●自分が現場に入らなくても、店が機能する体制が整っているか


味づくりへの情熱はもちろん必要。でも、それだけでは経営は続かない。経営としての設計──数字や財務の目線を持たなければ、店の未来は見えてこない。


勢いで店舗を拡大した先に、何が待っていたのか──次回は、この2号店を経て、ハイペースでの出店に踏み切った頃の話をお届けします。


ラーメン店『ソラノイロ』創業者

飲食店コンサルタント 宮崎千尋


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