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「世界観」が店を決める─デザイン・音楽・器の話

10月3日、『そらのいろ銀座本店』を開店する運びとなりました。麹町、西葛西に続き、今年は3店舗の出店が重なったことになります。現在、現場の中心に立っているのは、幹部の大庵と松本。このふたりには、ただ料理を任せているだけではありません。器の選定から音楽、掲示するポップに至るまで、自分の感性で「店をつくる」ことを任せています。


今回は、そんな彼らとのやり取りのなかで、あらためて考えた「魅せ方」や「伝え方」について書いてみたいと思います。ラーメンの味だけでなく、それをどう届けるか。その全体が「お店の世界観」になっていくという話です。


『そらのいろ銀座本店』
『そらのいろ銀座本店』


見せ方=世界観、という感覚


デザインと聞くと、ロゴや看板、店内装飾などを思い浮かべる方が多いかもしれません。でも僕は、「お客さんに何を伝えたいか」を形にすることもまた、デザインだと思っています。


たとえば、張り紙やPOPがいたるところに貼られていたり、行列の案内がわかりにくかったり、注意書きが多すぎて誰も読まなくなっているような店を見かけることがあります。伝えたいことがあるのはわかるけれど、それが「伝わる形」になっているかというと、疑問が残ることもある。だからこそ、表現としてのデザインがとても重要なんです。


ラーメン屋は、意外とこの部分にお金も時間もかけないことが多い。でも、空間で何を感じてもらいたいか、どんな気持ちで食事してもらいたいかを考えると、そこにこそセンスが必要になると僕は思っています。


僕自身、プロのデザイナーたちとやり取りしながら、たとえば文字の大きさや配置、写真と文字の重なり方、目に入る順番や視線の流れなどを学んできました。何を目立たせ、何をあえて抑えるか。そうした細かな判断の積み重ねが、空間の仕上がりを左右すると思います。これもまた、お客さんとのコミュニケーションなのです。


音楽や器も、メニューの一部だ


こうした感覚は、音楽や器にも通じると思っています。


今回、大庵と松本のふたりに「店で流す音楽を自分たちで決めてみて」とお願いしたところ、最初はまったく案が出てこなかった。普段からBGMに意識を向けていないと、いざ自分で選ぶとなっても、難しいんですよね。これも、ふたりにとっては大きなチャレンジだったと思います。


ソラノイロでは、これまで僕がプレイリストをつくってきました。僕自身、音楽は大好きで、たとえば誰もが知っている曲のカバーを、あえて無名のアーティストが歌っているような、少し引っかかる選び方が好きです。


音楽も器も、空間の色や素材も含めて、それぞれが店主の「世界観」を表現する手段であり、お客さまへのプレゼンテーションでもある。だから、たとえば「音楽は流さない」と決めるのも立派な選択です。テレビをつける、ラジオを流す、それぞれの方針に正解はありません。大事なのは、そこに意図があるかどうか。その空間をどう演出したいのか、ということなのです。



考える力を育てていくために


大庵と松本のふたりは今、出店に関わるすべての工程を経験しています。採用、教育、器の選定、音楽の選定、工事業者や食材業者とのやり取り──それを、3店舗分、同時進行で向き合ってきたのです。これは、1店舗だけを運営するのとはまったく違う密度と濃度の経験です。そのぶん、成長のスピードも速くなる。人を動かす力、伝える力、任せる力。これからの飲食業に必要な視点を、実地で体得してくれていると感じています。


ポップや音楽を例に挙げましたが、お店の世界観を形づくるのは、ラーメンの味だけではありません。伝え方、魅せ方、そして表現のセンス。ラーメン屋というフィールドの中で、もっと自由に、自分なりの感性を育てていってほしい。これからのソラノイロは、そうした人たちが経験を通して学び、成長していける場所でありたいと願っています。


ラーメン店『ソラノイロ』創業者

飲食店コンサルタント

宮崎千尋

 
 
 

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