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“うまい”をつなぐコンサル─ラーメン業界、現場とメーカーのあいだで

更新日:7月22日

これまでのnoteで、マレーシアでのプロデュースや台湾出店など、グローバルな活動について綴ってきましたが、僕のコンサルティングワークはそれだけにとどまりません。国内では、大手外食チェーンから個人店、さらにはラーメンとは無縁の業種からも多様な相談をいただき、それに応える中で、自分なりの支援スタイルが形になってきたように感じています。


たとえば、2017年にプロデュースした沖縄そば屋「真打田仲そば」。これは、沖縄の人気パンケーキ店からの依頼でした。ラーメンに限らず、フードコート業態やドーナツショップなど、幅広い領域でのプロデュースを通じて、飲食に対する自分の視点も広がってきたと感じています。


そんな中、ある食品メーカーから声をかけていただき、飲食店支援の延長線上で食品業界のバックアップにも携わるようになりました。コンビニ向け冷凍食品の開発支援に加え、ラーメン食材メーカーの営業サポートもその一環です。


僕の名前が前面に出るようなプロデュースやコンサルティングとは少し違いますが、新商品の企画提案、既存商品の活用によるメニュー開発、ワンタンや餃子などサイドメニューの提案、卸業者へのプレゼン同行など、支援内容は多岐にわたります。その中で、知識や経験が生かされることに手応えを感じます。


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ラーメン業界には、製粉会社や製麺所、卸業者といった複数のプレイヤーが関わる、独特な流通構造があります。さらに、個人経営の店舗が多いため、仕入れ先や食材選定に強いこだわりを持つお店が少なくありません。地域ごとの味の好みや食文化も加味する必要があり、一律の営業戦略が通用しにくいのが現実です。


こうした現場支援の中で強みになるのが、ラーメン店の最前線で培ってきた現場感覚、そしてラーメン職人としての肌感覚です。


メーカーと現場のあいだには、やはり明確なギャップがあります。メーカーの方々は研究データや品質管理には非常に長けていますが、実際の店舗でお客さんがラーメンを食べて「うまい」「もう一度食べたい」と感じるかどうか、そこまでの感覚はなかなか掴めないものです。


そのあいだに立ち、現場の声を届けるのが僕の役割です。たとえば、製品開発においてはコストや安定性が重視されますが、現場では味や食感、調理しやすさといった「手を動かす人間の実感」が何より大事です。麺ひとつとっても、茹で時間やスープとの絡み、経時変化など、細かな調整が求められます。


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最近注目されている「もち小麦」もその一例です。食べ手がどんな食感を好み、どう受け止めているか──そうした一次情報を丁寧に汲み取り、メーカーと一緒に提案の形にしていく。そのプロセスこそが、現場と開発の橋渡しになるのだと思います。


ラーメン業界は、トレンドの移り変わりが激しく、消費者の嗜好も年々多様化しています。そんな中で、現場で直接培ってきた「食べ手の感覚」は、メーカーの営業戦略や商品開発において、何よりもリアルで貴重な情報になります。


現場の感覚と、メーカーの論理。その二つをつなぐ存在として、コンサルティングが果たす役割は小さくありません。僕自身、これからもその橋渡し役として、現場の声を起点にしながら、業界全体の前進に少しでも貢献できたらと思っています。


単なるコンサルではなく、「この人なら、ちゃんと現場とメーカーをつないでくれる」と思ってもらえるような存在でありたい。今回は、やや上流の立場から見たコンサルティングの話でしたが、次回はもう少し店舗サイドに寄った取り組みについても書いてみたいと思っています。ぜひ、楽しみにしていてください。


ラーメン店『ソラノイロ』創業者

飲食店コンサルタント 宮崎千尋

 
 
 

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