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ソラノイロの“色”を出せなかった─商業施設とブランドの摩擦

このたびソラノイロでは、2023年10月以来となる新規出店を2店舗、そして1店舗のリニューアルオープンを予定しています。


まず最初に動くのは、先日14周年を迎えた麹町のソラノイロ本店。この店舗を、東銀座へと移転し、「そらのいろ本店」として新たにオープンします。オープンは9月を予定しており、これを皮切りに、新しい動きが続きます。


多店舗展開をするということ。これは、ラーメン店として営業するだけではなく、「持続的に営業し、従業員に還元していく」という意味でも、一つの手段になります。


でも、店舗を増やすということは、単に“数を増やす”ことではありません。一店舗ずつ、その場所に合わせた設計が必要であり、ブランドとして「何を大切にしたいか」を、常にゼロベースで、自分たちの軸を問われる作業でもあります。


僕たちも、これまで10店舗を立ち上げてきました。その中で、「ソラノイロらしさを出しきれなかったな」と感じる場所もあります。


今回は、そんな“うまくいかなかった”話を、正直に綴ってみたいと思います。


ブランドカラーが使えない? 大きな違和感


京橋の商業施設に出店したときのことです。

レイアウトやファサードの設計を施設側と交渉していく中で、僕たちは創業以来ずっと大切にしてきた“ソラノイロの色”──水色の看板を設置したいと希望しました。


でも、返ってきたのは「施設の景観に合わないので、黒で統一してください」という返答。

「まあ、そういうこともあるか」と、そのときは一度飲み込み、やむなく黒基調の外観でオープンしました。でもやっぱり、それは僕たちの“色”ではなかったんです。


「この店、本当にソラノイロなの?」


そう感じてしまったのが、正直なところでした。


ブランドカラーだけの話ではありません。内装の細部にいたるまで、施設のルールや意向に縛られ、自分たちの伝えたい世界観が表現しきれなかった。


それは決して、単なる「見た目」の問題じゃない。“ソラノイロらしさ”が削がれていく感覚があった。正直、もどかしさが残る出店になった気がします。


浅草橋で直面した、想定外の契約リスク


本店、2号店(のちに『素良』)、東京駅、京橋、名古屋――そして6番目に出店したのが、浅草橋の店舗でした。


ここは、営業店舗でありながら、工場・セントラルキッチンとしての機能も持たせるという、少し実験的なスペースとしてスタートさせた場所です。


ところが、ここでも想定外のトラブルが起きました。あとになって分かったのは、僕らが契約していたのが「二重のサブリース」――つまり転貸の転貸だったということ。


不動産会社が間に2社入り、本来の家賃よりも10万円以上上乗せされた金額を僕らは支払っていたんです。さらに、振込まわりの不備や、意思疎通のズレも重なって、最終的には裁判沙汰にまで発展。長期化しても消耗するだけだと判断し、こちらの費用でスケルトンにして撤退しました。


対応していた不動産会社の契約書だけでは、サブリースの構造までは見えなかった。とはいえ、その先を詰めきれていなかった自分にも反省があります。それ以降は、契約を俯瞰して捉えて把握するようになりました。


そして、もう一つ学んだのは、不動産会社であれ、内装業者であれ、店舗づくりに関わる人たちは“ただの取引先”ではないということ。


ちゃんと信頼関係を築ける相手なのか。本当に付き合っていける人たちなのか。


それを見極めることも、出店判断において欠かせない要素なんだと、強く思わされた出来事でした。


東京駅は“共に戦ってくれる”施設だった


一方で、東京駅にある「ソラノイロNIPPON」(現在は『そらのいろNIPPON』)は、グループの中でも特に大きな存在感を発揮してくれている店舗です。


ここは、東京駅構内の「東京ラーメンストリート」。全国の名店が集まるなかで、『天草大王』を使った醤油らーめんや、キノコベジソバを軸に、グルテンフリーやヴィーガン対応といった幅広いメニューを展開しています。日本のお客様はもちろん、海外のお客様にも喜んでもらえる構成を意識しています。


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路面でも施設でも「ソラノイロの色」は変わらない


僕たちは、「ラーメンをつくるチーム」であると同時に、「ソラノイロの世界観と空間をつくるチーム」でもあると思っています。


だからこそ、その空間に“らしさ”を出せない場所では、本来の力が出しきれない。これは、いくつもの出店を経て、あらためて実感していることです。


もちろん、商業施設には施設なりのルールや事情があるし、すべてを自由にやらせてもらえるわけじゃありません。それは理解しています。


でも、東京ラーメンストリートのように、話し合いながらも僕たちの「色」をしっかり出していける店舗は、やっぱり強い。


たとえば、2022年に改装した東京駅店。それまでのポップで女性向けの外観から、グレーを基調にした“職人路線”にリブランディングしました。店内には日本の工芸品を置いたり、シックな空間に切り替えたり。その結果、売上は月500万円ほど伸び、確かな成果にもつながっています。


本店を移し、また新たな拠点を構えていく──今は、まさにそのタイミング。そんな渦中にいるからこそ、あらためて“自分たちらしさとは何か”を見つめ直しているところです。

これからのソラノイロにも、ぜひご期待ください。


ラーメン店『ソラノイロ』創業者

飲食店コンサルタント 宮崎千尋

 
 
 

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