ラーメンイベントの現場から──プロの凄みと、自分たちらしさ
- 宮崎千尋

- 7月10日
- 読了時間: 3分
更新日:7月22日
僕たち、ソラノイロも2025年6月で創業14周年を迎えました。前回は、店舗を広げていく中で感じたことを綴りましたが、飲食店を運営していると、店舗とはまったく違う“舞台”に立つ機会もあります。そのひとつが、ラーメンイベント(催事)への出展です。
これまで、多くのイベントに出る機会をいただいてきました。でも、どんなきっかけであれ、イベントという環境は、普段の営業とはまったく違う論理で動いていると感じています。
今回は、そんなステージに立ってみて、僕自身が肌で感じたことを、なるべくリアルに、正直に書いてみたいと思います。

催事という場には、その道の“プロ”がいる
イベントに出ると、まず圧倒されるのが、催事の現場に慣れた「プロたち」の徹底ぶりです。
出店経験が豊富で、オペレーションやお客さんの動線まで熟知している。イベントでどう戦うか、そこには明確な“勝ち筋”があります。
たとえば、お客様に響くメニューの打ち出し方、ポスターの色使い、ブースのディスプレイ。さらには、並ばせ方と回し方、ブース内での導線管理まで。どう目立ち、選ばれ、行列を滞留させずに回転させるか。すべてがロジカルに設計されているんです。
店舗営業では、味・サービス・空間づくりに、自分たちの哲学を込めるのが当たり前。でも、イベントは違います。数日間の短期決戦で、限られた条件の中で「いかに杯数をさばくか」が問われる。ここに、店舗営業との大きなギャップがあるんです。
じゃあ、催事に出る意味はあるの?
そう聞かれたら、僕はこう答えます。
出る意味は、ある。
だけど――その目的がはっきりしていなければ、ただ消耗するだけで終わってしまうこともあります。

ラーメンイベントに出る「目的」とは
そう――目的とは、たとえば、
・社員の成長の場にする
・オペレーションの確認]
・新メニューのリアクション調査
・ブランドの認知拡大
こうしたゴールや検証ポイントが明確であれば、催事は学びの場になり得るでしょう。実際、イベントで改善したオペレーションが、そのまま店舗厨房にフィードバックされたこともありました。
ただし、催事で求められるのは、「杯数」という結果。この現実は、店舗営業での売上とはまた違ったシビアさがあります。
以前のnoteでも書いたことがありますが、創業当初、ある催事に参加したときのこと。「2000杯は確実に出るから」と言われ、信じて参加したものの、実際に出たのは半分以下。そのうえ、入金は2か月後、食材は仕込み済みでロスが発生。想像以上に厳しい現実が待っていました。
もちろん、催事のすべてがこうとは限りません。でも、短期決戦であるがゆえに、失敗したときのダメージも大きい。これは今でも、苦く、でも確実に自分の糧になっている経験です。

僕たちにしかできない「催事」を考えていく
だからこそ、最近では、催事に出る頻度を少しずつ絞っています。出るときは、「何のために出るのか?」「それは自分たちの理念に合っているのか?」を、スタッフとも話し合いながら決めるようにしています。目的があいまいだと、たとえ数字が良かったとしても、その経験や技術がグループの中に残らない。
「目に見えない資産」として積み上がっていくものこそ、僕たちの財産になるはずだから。
イベントのプロたちのスキルと経験値、売るための徹底ぶりには本当にリスペクトしかありません。でも、僕たちはあくまでラーメン屋として、日々お客様と向き合い、店でラーメンを作っています。
どこに重きを置くか。その違いなんだと思います。
次回は、商業施設という舞台で、ラーメン店をどう成立させようとしたか。「個性を出せない箱」の中で、何を試み、何を諦めたのかについて書いてみたいと思います。
ラーメン店『ソラノイロ』創業者
飲食店コンサルタント 宮崎千尋



コメント