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商売は頭を下げてなんぼ 実るほど頭を垂れる稲穂かな

いよいよ今日10月3日、ソラノイログループのフラッグシップショップとして、『そらのいろ銀座本店』が開店します。そこで今回は、日々、お客さんを迎える僕たちの姿勢について書いてみようと思います。


そらのいろ銀座本店「特製中華ソバ」
そらのいろ銀座本店「特製中華ソバ」

簡単なようで難しい、「頭を下げる」ということ


いま、東京都内だけでも4,000店近くのラーメン店があると言われます。そのなかで、自分の店を選んでもらうにはどうしたらいいか。味、接客、清潔さ――どれかひとつ欠けても、お客さんはすぐに離れてしまう。選ばれる理由を持ち続けなければいけません。


ソラノイロを開業した当初は、とにかく目の前の営業、数字、課題と戦う日々。余裕はまったくなく、「頭を下げる」という気持ちを持てていなかったように思います。


もちろん、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」という挨拶と共に、「頭を下げる」という所作は、修行時代から店に立つようになって以降、当たり前のようにやってきていました。でも、そこに「意識」があったかというと、微妙ですね。誰に対して、どんな感謝の気持ちを込めて頭を下げているのか。それに気づいてから、商売の流れが少しずつ変わっていったように感じます。


けれど、いつしか、意識して頭を下げることが身についていきました。その転機のひとつが、東京駅への出店だったかもしれません。施設への出店ということでステークホルダーも多く、関係各所には頭を下げてお願いしましたし、業者さんにも「これで取引を続けてください」と、値段や納期の相談も重ねました。社員に対しても、働き方や姿勢について頼むことが増えた時期でした。


僕も、ラーメン業界以外の、いわゆるアーティストの方と仕事をする機会があります。そのときに感じるのは、アーティストとしての表現力や感性とは別に、「仕事を受ける姿勢」には差があるということです。


ラーメン屋も、ひとつの「表現」です。限定ラーメンや中華ソバ、店舗の世界観――そこには作り手としての想いや個性があります。だから、ある種アーティスト的な側面もあると思っています。


でも、それだけではダメなんです。世界観を一方的に押しつけて、「これがオレの表現だから」と高圧的な態度になってしまえば、どれだけ創造性があっても、商売としては成り立ちません。4,000店ものラーメン店がひしめく中で、お客様に興味を持ってもらい、足を運んでもらわなければ、続けていけないのです。


そのためには、謙虚さが欠かせない。感謝の気持ちが、商売の基本だと思います。


僕が取引していて「気持ちいいな」と思える相手は、そうしたバランス感覚を持っている人です。どこかに「やってやっている」という意識が見えると、少しずつ信頼は削がれてしまうように思います。


応援されなければ、営業を続けていくことはできない


以前、某有名店にラーメンを食べに行ったときのことです。冬の寒い日、開店の30分前から並んでいたら、スタッフに「壁に寄っかかってんじゃねえよ」と怒鳴られたことがありました。並ぶ位置の案内もなく、説明もなしに高圧的な言葉をかけられ、ラーメンを食べる前からテンションは下がり、不快な思いをして帰ることになりました。


あとから聞いたところ、その日はテレビの取材が入っていたらしく、店主がピリピリしていたそうです。でも、それはお客さんには関係のない話。どれだけメディアに取り上げられても、ガイドブックに載っていても、評価されるのは最終的に「店舗での体験」なんです。

どこかで「俺はすごい」「わかるやつだけ来ればいい」というスタンスになってしまったら、いくら表現が優れていても、いずれお客さんは離れていってしまうでしょう。


もし、どこかで「自分はすごい」「わかるやつだけ来ればいい」というスタンスになってしまったら、いくら表現が優れていても、いずれお客さんは離れていってしまうと思います。

この出来事を通して、あらためて自分たちの接客や、「頭を下げる」という姿勢の意味を考えるようになりました。お客様に応援されなければ、僕たちは商売を続けていくことはできません。


いま、ソラノイログループは店舗が増え、組織も拡大し、責任の範囲も広がっています。けれど、立場や規模に関係なく、「ありがとうございます」「お願いします」と自然に伝えられる人間でありたい。どれだけ成長しても、そうした姿勢を大切にしていきたいと思っています。


「実るほど頭を垂れる稲穂かな」――その言葉の意味を日々実感しながら、今後も営業を続けていきます。


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