店主の背中から、何を学ぶのか──独立希望者へのメッセージ
- 宮崎千尋

- 10月8日
- 読了時間: 3分
ソラノイログループの新たな本店『そらのいろ銀座本店』が、いよいよ開店しました。これまで積み重ねてきた経験の集大成として、スタッフ一同、背筋を伸ばしてこの日を迎えることができています。
そんな節目のタイミングで、今回は「独立希望者が店主から何を学ぶべきか」というテーマについて書いてみようと思います。味や技術だけではなく、考え方や姿勢。僕自身が修業時代に学び、今、スタッフに伝えていきたいと思っていることについて、言葉にしてみます。
世界観を学ばなければ、弟子ではない
独立を目指してラーメン店で修行を重ねる人は少なくありません。ソラノイロにも、将来自分の店を持ちたいという想いを持ったスタッフがいます。でも、僕はいつも思うんです。独立希望者は、店主の「何」を学んでいるのか。
ラーメンの作り方やレシピ、オペレーションの流れ――もちろん、それらは大切です。技術として身につけるべき基本です。でも、それだけでは足りない。
僕が本当に伝えたいのは、「考え方」や「価値観」です。
たとえば、自分が好きなラーメンのレシピをそのまま使って独立する人がいます。それ自体は否定しません。でも、その一杯の奥にある「姿勢」や「哲学」まで受け取れているだろうか。
スタッフにどう向き合うか。お客さんにどう接するか。業者さんや業界全体をどう見るか。そういった“世界観”こそが、師匠の背中から学ぶべきことだと僕は思います。どこか他人事のように受け流し、自分の中に取り込もうとしない限り、それはただの“技術の継承”で終わってしまう。
ただ「レシピを教わった人」ではなく、その世界観を自分なりに咀嚼し、継承し、広げていけるかどうか。そこにこそ、修行の本質があるのだと思います。
僕は今でも、自分の師匠・河原成美さんの言葉を語り続けています。
「商売人は好かれてなんぼ、可愛がられてなんぼ、嫌われたら終わり」
この言葉は、自分の信念として大切にしている言葉です。「それってパクリじゃん」と言われても、僕は迷わず言います。
「僕は河原成美の弟子ですから。当然でしょう」と。
弟子なら、師匠の言葉を受け継ぐのは当たり前です。本当に腹落ちしていて、自分の信念になっているなら、自然と口から出てくるはずです。
たとえば、麹町店をリニューアルした『豚骨ラーメン専門店 そらのいろ麹町本舗』という名前にも、大切な意味を込めらています。
1994年、河原成美さんがオープンした『塩原本舗』。これは一風堂の3号店であり、製造工場を併設した店舗でした。その姿勢に強く感銘を受け、本店ではなく“本舗”という名前をつけたんです。
だから本当は、スタッフにも「なぜ“麹町本舗”なのか?」と聞いてほしかった。そこに込められた思いまで、汲み取ってくれたら嬉しい。そう、心から思っています。
「修行をする」とは、どういうことか?
修行というと、技術の鍛錬のように捉えられがちですが、本当に大切なのは「素直さ」と「愚直さ」だと思っています。素直に聞く、考える、想像する、仮説を立てて動く。そうやって、自分の中で“考え”を育てていくことこそが、修行の本質ではないでしょうか。
僕はよく「ややこしい人間」と思われがちですが、実はとても素直な方だと思っています。良いと感じたら、まずやってみるし、人の話にはちゃんと耳を傾けます。そのうえで、自分の経験や価値観を少しずつ重ねていく。それが、僕の考える“本当の修行”です。よく、「何を学べばいいですか?」と聞かれます。その問いに対して、僕はこう答えています。
「まずは、素直に、全部吸収すること。」
その上で、自分の色を乗せていけばいいんです。独立とは、自分の店を持つことと、必ずしもイコールではありません。自分の考えを持ってこそ、本当の独立だと思います。
そしてその考えが、誰かの系譜の中で、しっかりと根を張っていること。それが、僕が考える修行、そして「師弟関係」のあり方なのです。




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